水


クジラ日記

2002 5/18〜19 和歌山県・那智勝浦町
船長: 浦山 昌嗣

東大・三重大・マッコウクジラ合同調査


 クジラの潜水調査

 この日は残念ながら、波が高いということで、ホエールウォッチングの船は欠航になってしまいました。ところが、日頃から懇意にしていただいている三重大の吉岡先生が、クジラの調査船を出されるということで、無理をお願いして、調査船に乗せていただけるこクリック音を探る!とになりました。一応カメラマンという名目で・・・。(^^ゞ

 調査隊のメンバーは、東大の天野先生、三重大の吉岡先生、アシスタントの仲君、そして浦山船長です。今回の調査内容は、まずマッコウクジラの背中に、水温や水圧を時間ごとに測定するセンサを吸盤でくっつけます。数日後、吸盤がクジラからはがれた後、発信機を頼りにセンサを回収し、記録されたデータを分析するというものです。

 記録されたデータから、クジラの一日の行動が読み取れます。3年前からこの調査は行われていて、その結果、マッコウクジラは、1500mくらいの潜水を昼夜を問わず、10分間隔くらいで絶えず行っているということがわかりました。そんな調査船に同乗させてもらえるとは、感謝感激です!



早くも発見!

 天気の回復を待ち、午前8時過ぎに出航。30分くらい船を走らせたところで、水中マイクを投入しました。すると、マッコウクジラのクリック音が聞こえるじゃありませんか。間もなく、近くの漁船からマッコウのブロー発見の情報が入ってきました。急いで水中マイクを引き上げ、その場所に船を走らせます。
狙いをつける天野先生
 前方に、2頭のマッコウクジラのブローが見えてきました。まだ若いクジラのようで、ブローも少し弱々しい感じです。あまり小さいクジラでデータを取るのもなんなので、その場で親クジラが浮上するのを待つことにしました。しかし、こんなに早くクジラを発見できるとは思いませんでした。センサの回収時のことを考えると、できるだけ近い場所のクジラをターゲットにしておきたかったので、ラッキーでした。

 船上では、天野先生がボウガンを打つ準備をし、他のメンバーはクジラのブローを懸命に探します。親と思われる大きめのクジラが浮上してきたので、船長さんが巧みに船をクジラに近づけ、チャンスを狙いましたが、あと1歩のところで逃げられてしまい、なかなか発射することができません。クジラにぶつかりそうなところまで近づくのですが、タイミングを取るのは、かなり難しいようでした。


3度目の正直

発射! 何度か接近を繰り返し、ついに丁度よいタイミングでクジラにつけることができました。天野先生が狙いを定め、クジラの背中に向けて、ボウガンを発射します。ところが、吸盤の角度がずれ、残念ながらクジラの背中にはじかれてしまいました。急いで、アシスタントの仲君が、網でセンサと矢を回収します。すると、センサのほうにクジラの皮膚がくっついていました。偶然、クジラの皮膚が剥がれてしまったようです。貴重なサンプルが手に入りました。

 2度目の挑戦も失敗。そして、3度目。パコッという音とともに、ついに装着に成功しました!クジラが潜る直前だったため、くっついた位置が少し後方になってしまいましたが、そのままクジラは深く潜っていきました。さあ、これからは発信機を頼りに、クジラを追いかける番です。しかし発信機のアンテナが空気中に出ていないと電波を拾うことができないため、クジラが浮上するまでは、位置を確認することができません。

 またしばらくクジラが浮くのを待つことになりました。ちょうど40分くらい過ぎた頃、クジラのブローがないかあたりを見回していると、遠くのほうで、突然大きな水しぶきが上がるのが見えました。マッコウクジラがブリーチングしたようです。ちょうどその後くらいから、発信機の電波が入ってきました。天野先生がアンテナを操り発信機の方向を指し示します。

 船をその方向に進めていくと、マッコウクジラがいました。 確認するために近づきましたが、センサが見当たりません。しかもクジラが潜った後も発信機は鳴り続けています。どうやら、さっきブリーチングしたときの勢いで、クジラからはずれてしまったようです。もう一度回収して、最初からやり直しです。クジラも異物が身体にくっついているのが、きっと嫌だったんでしょうね。ブリーチングすることで、払い落としたのでしょう。


マッコウに変化が・・・

発信機は何処に? ところが、その後からクジラを発見することはできても、船が近づく前にクジラは尾びれを上げて潜るようになってしまいました。これでは、ボウガンを発射することすらできません。クジラたちは、音でコミュニケーションをとるといいますが、クジラ同士で危険を知らせあっているのかもしれません。何度かクジラを発見しましたが、ことごとく接近に失敗してしまい、結局再びセンサを取り付けることはできませんでした。

 朝からずっとうすい雲に覆われていましたが、3時ごろになってようやく空が明るくなってきました。マッコウたちが一通り潜ってしまった後、イルカの群れの情報が入ってきましたので、イルカを観察することにしました。海面が白くはじけている様子が見え始め、近づくとイルカたちが、勢いよく海面を跳ねていました。スジイルカの群れでした。イルカたちは珍しく船首波に乗ったり、すごく高さのあるジャンプを披露してくれたりしました。

 そうこうしているうちに、捕鯨船が大マッコウを見たという情報を知らせてくれたので、そのポイントへ向かいました。遠くからでもはっきりと確認できる大きなブロー。成熟した雄のマッコウクジラです。残念ながら、船が近づく前にクジラは尾びれを上げて潜ってしまいましたので、そのクジラがまた浮上するのを気長に待つことにしました。しかし40分待てども、1時間待てども、マッコウクジラの姿はいっこうに現れません。結局、その日はもう夕暮れ近くになってしまいましたので、あきらめて翌日また挑戦することにしました。

トップへ クジラの海へ トップへ クジラ日記トップ

水
inserted by FC2 system