水


クジラ日記

2005 5/21 和歌山県・那智勝浦町
船長: 東 信義


 5/21、ついにこの日がやってきました。南紀クジラウォッチングツアーと題し、全国のクジラ好きな人々といっしょに1日中、南紀の海でクジラやイルカをウォッチングしようという企画の始まりです。関東や関西、東海地方から合計10人のクジラ好き人間が集まりました。この日の主なコンセプトは、夕暮れ時の光に包まれたマッコウクジラを見る(撮る)というものでした。到着時間などを考慮し、午前10時に出港しました。それにしても今回は、カメラマンの数が多い!それぞれが持っている機材も相当なものです。それだけ皆の意気込みが感じられました。

 今回の船長は東さん。そして三重大の徳田くんもアシスタントとして乗船してくれました。出港して間もなく、朝便で出港している米川船長からクジラの情報が入ってきました。なんとニタリクジラの親子がいるとのことです!私はまだ南紀ではニタリクジラを見たことがありません。しかも親子と聞けば、南紀では初めての目撃例になるかもしれません。まずはそのポイントへ向けて一直線です。前方にウォッチング船が見えてきました。髭クジラは、マッコウクジラに比べて潜水時間は短いです。長くても15分くらいでしょうか?到着して間もなく垂直に伸びたブローが目に飛び込んできました!

 しかし、ニタリにしては身体が妙に黒っぽいし、背中の盛り上がりが気になります。ん?あれはニタリではなく、ザトウクジラじゃありませんか!これまた珍しい!沖縄や小笠原ではよくウォッチングされているクジラですが、南紀でザトウに出会うことは本当に稀です。私自身も南紀でザトウを見たのはこれが初めてです。これには本当に感動しました!しかも親子連れです。2頭が寄り添うように並んで泳ぐ姿は、とても微笑ましいものでした。

 接近するとその大きさがよくわかります。マッコウは上から見ると意外と細身に見えるのですが、ザトウは違います。身体の幅が太いのでボリューム満点なのです。普段見ているマッコウが小さく感じられるほどでした。頭にはたくさんの瘤があり、ブローは高くて大迫力!尻尾もとても大きかったです。子クジラはやはり小さくって、ブローもはっきりと見えません。潜るときも尻尾を上げずに潜ります。この辺は、ザトウもマッコウも同じなんだなあと思いました。

 この2頭は特に決まった方角に移動しているという感じではありませんでした。ザトウクジラは、春から夏にかけて南の暖かい海域から北極やアラスカの方まで大移動をすることが知られています。この親子は移動の途中で、ルートを外れてのんびり遊んでいたのかもしれませんね。私たちにとっては、全く予想していなかった出会いで、本当に幸運でした。何度か接近を繰り返し、クジラも少し遠ざかる素振りを見せたので、いよいよマッコウを探しに出かけることにしました。

 しかし、ここ数日海況が不安定で、ウォッチング船も出ていなかったため、マッコウの情報は全くありません。この日も漁船や他のウォッチング船からの情報は、入ってきませんでした。こうなれば、自分の目だけが頼りです。目を凝らして遠くの水平線を探しますが、クジラの気配はまったくありません。海はとても穏やかでクジラを探すにはもってこいの状況だったのですが、結局夕方になってもクジラはおろかハナちゃんさえも見つかりませんでした。

 というわけで夕陽とマッコウクジラを見るという当初の目的は達成されませんでしたが、思いがけない出会いに喜んだ一日となりました。いつかは夕陽とマッコウクジラを見たいので、また次回挑戦したいと思います。参加してくださった皆さん、協力してくださった南紀マリンの方々、どうもありがとうございました。また次回、よろしくお願いします。m(__)m

この日の写真は、こちらからご覧ください。


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