水


クジラ日記

1999 7/17〜19 高知県・大方町


1日目(ニタリクジラ1頭)

 やって来ました高知県。今回は小笠原友達の横本さんもいっしょです。高知駅でレンタカーを借り、大方町まで2時間ちょいといったところでしょうか。あいにく天気は今ひとつだったのですが、波はないということだったので無事出港できました。前日までの情報では、ここ2日くらいクジラを発見できていないということだったので、少し不安だったのですが、午前中に足摺岬の沖でクジラを発見したという情報が舞い込んできたので、そこへ向けて船を走らせました。たどり着くと、すでに何隻かの船が集まっていました。

 まずは、ブローを捜します。・・・と突然周りの船が向きを変えて、走り始めました。ニタリクジラのブロー発見です。ところがクジラは浮上しても、1回か2回くらいしかブローをせずに、すぐに潜ってしまうのでなかなか近づくことができません。おまけに向きを変えては、まったく違う場所に浮上するので、捜すのも大変な状況です。

 結局、何度かこのニタリクジラのブローや背中を見ることはできましたが、距離が遠かったので、満足はできませんでした。ニタリクジラにも人間と同じように、いろんな性格のクジラがいます。自分から船に近づいてくるクジラもいれば、今回出会ったニタリクジラのように、船を避けてすぐに潜ってしまうクジラもいます。こんな日は、いくらクジラを追いかけてもいい撮影はできないので、残念ですがあきらめて帰ってしまったほうがいいのかもしれません。1日目のウォッチングでは、このニタリクジラ1頭と出会っただけでした。


2日目(マイルカ大群、ニタリクジラ1頭)

 2日目、台風が近づいてきていて、空も雨模様だったので、出港できないかなと思っていましたが、思ったほど波がなかったため、なんとか出港することができました。昨日見たニタリクジラしかいなかったら、ちょっときびしいなと思いながら、クジラを捜します。仲間のウォッチング船から連絡が入ってきたのでしょう。船が突然方向を変えて、全速力で走り出しました。ずいぶんたくさん距離を走ったところで、前に船が見えてきました。

 船たちは白い飛沫を立てながら、一定の方向へ向って走っていました。その船たちの前の方に目を凝らすと、ばしゃばしゃ小さな飛沫が上がっています。マイルカの群れだったのです。数はおよそ50頭くらいでした。今までこの海で出会ったマイルカの群れにしては小さいほうでした。しばらくこの群れと遊んだ後、別のクジラを捜しに出ましたが、午前中、結局クジラを見つけることはありませんでした。

 午後、別の船に乗り換え、またまたクジラ探しです。午前中と同じように、マイルカの群れを発見したという情報が入ってきました。ところが、着いてみて驚いたのですが、午後のマイルカは、かなりの数に膨れ上がっていたのです。数百頭はいたと思われるマイルカたちが、あたり一帯の海に散らばっていました。海面を跳ねながら、船に向ってくる彼らの姿は、思わず見とれてしまうほどかわいかったです。船の軸先について遊んだりもしてくれました。
マイルカの群れ
 いつまでも彼らと一緒にいたかったのですが、船はさらに沖へクジラを捜しに行くことになりました。ずいぶん沖まで出たでしょうか。気がつくと海鳥たちが、海面を舞っている姿をよく見るようになりました。ぼーっと海鳥たちを眺めていたら、突然クジラの大きなブローが目に飛び込んできました。ニタリクジラです。残念ながら船が一隻しかなく、昨日と同じクジラだったのか、すぐに潜ってしまうので、その後2回ほど目撃しただけで、すぐに見失ってしまいました。他の船が追いついたときにはもう、影も形も見当りませんでした。


3日目(ハナゴンドウ大群、ニタリクジラ1頭)

 さあ、いよいよ今日が最終日です。いやがおうにも、クジラに会いたいという思いはつのります。昨日マイルカの大群に出会えたのは、ものすごい幸運だったと思うのですが、最後にもう一回、巨大なニタリクジラに目の前で会ってみたかったのです。クジラに会えるかなという期待と不安を胸に、ひたすらクジラを捜します。

 今回は台風が近づいてきている影響もあってか、ニタリクジラたちはほとんどが沖の方へ避難していたようです。台風の波の影響で座礁したりしないように、波の高いときは沖へ逃げるというのが、彼らなりの生活の知恵なんじゃないかということを、教えてもらいました。

 今日は船の数が少なく、なかなかクジラ発見の情報が入ってきません。仲間の船から連絡が入ったのが、ようやく10時半前になってからでした。今からそのポイントへ向っていては、お昼までに戻るのはとても無理です。船長さんは、時間を過ぎてもいいからと船を反転させ、連絡のあったポイントへ向ってくれました。かなりの距離でした。1時間以上が経過し、ようやくそのポイントにたどり着いたとき、たくさんのハナゴンドウたちが視界に飛び込んできました。
ハナゴンドウ
 全部で200頭以上はいたでしょうか。和歌山の方でもハナゴンドウはよく見かけるのですが、こんなにたくさんのハナゴンドウを見るのは僕自身、珍しいことだったので、かなり興奮してしまいました。こちらではハナゴンドウの捕鯨をしていないせいか、船に向って泳いでくる姿も、たくさん見ることができました。全身に白い傷を作った特徴あるハナゴンドウたち。なんだか笑っているように見える口元が、とてもかわいらしかったです。

 もう帰ろうということになって港へ向う途中、船長さんが突然、大声で叫びました。クジラ、クジラ、クジラー!!船の目の前にニタリクジラが浮上したようなのです。僕たちは完全にお帰りモードに入っていたので、その瞬間をすっかり見逃してしまいました。あたりではあちこちで魚が玉になって海面をちゃぷちゃぷざわめかせています。クジラはこの魚たちを追って、この海域で捕食していたのでしょう。最後に遠くでしか見えませんでしたが、ニタリクジラに出会うことができて、なかなかすばらしいウォッチングができたと思います。

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