水

三宅島・御蔵島

 伊豆七島の一つである御蔵島。この島の周りには野生のイルカたちが暮らしています。フレンドリーなイルカたちといっしょに泳ぐなんてことも夢ではありませんよ!

会えるイルカ ハンドウイルカ
会える時期 4〜10月



目次
[初めて泳いだイルカ] [目指すは御蔵島] [イルカの住む島]
[水中にこだまする声] [夢のようなひととき] [いつか再び]





初めて泳いだイルカ

 初めて小笠原に旅したとき、島の周りにイルカが暮らしているので、運が良ければいっしょに泳げるよと言われました。イルカと泳ぐことができるなんて、まるで夢のようです。水族館などで、イルカを見たことはありましたが、野生のイルカは見るのも初めて。イルカたちが普段暮らしている海で、いっしょになって泳ぐなんて、なんて素敵なんだろうと思いました。

 運良くイルカが見つかり、さあ泳ぐぞという段階になりましたが、ひとつ気になっていたことがあります。海の真ん中で泳ぐので、まったく底が見えないのです。これは、かなり恐いです。思い切って船から飛び込むしかありません。僕はそれでもイルカと泳ぎたい一心で、海に飛び込みました。ばしゃん!・・・

 目の前が泡だらけで何も見えません。すーっと泡のところを抜け、前を見つめると本当にイルカがいました。イルカが視界に飛び込んできたかと思うと、僕の下に回りこみ、あっという間にどこかに行ってしまいました。目の前にイルカがいるだけで、心臓はドキドキして嬉しさがこみ上げてきます。気になっていた海の深さなんてどこかへいってしまいました。

 結局、小笠原でイルカと泳げたのは、この一回きりで、それもあっという間だったので、少し物足りなかったのです。本当に運がいいときは、20分でも30分でも、イルカたちがずっと自分の周りを回ってくれるということを聞き、ますますイルカと泳ぎたくなりました。





目指すは御蔵島

すとれちあ丸

 小笠原で、初めてイルカと泳いでから半年が過ぎました。小笠原までは、なかなか行けないけれど、もう少し近くの御蔵島でもイルカと泳げると聞き、早速お盆休みに行く事に決めました。御蔵島は伊豆七島の一つで、東京から船(すとれちあ丸)で三宅島まで行き、さらにそこから別の船に乗りついで行かないと、たどり着くことができません。

 しかも三宅島〜御蔵島間の船は、海況が悪いと欠航になることが多いらしく、ある程度の覚悟がないと御蔵島までは行けません。思い切って御蔵島まで行きたかったのですが、三宅島のほうがイルカウォッチングの船がたくさん出ていると聞き、今回は三宅島までで我慢しました。

 すとれちあ丸が東京・竹芝桟橋を出発するのは、午後10時半。船は夜どうし走りつづけ、次の日の朝5時くらいに三宅島の港に着きます。船内は大勢の人で、寝る場所を確保するのも大変です。なんとか無事に三宅島に着くと、まだ明けきらない空と、朝の冷たい風が迎えてくれました。他に飛行機(エアーニッポン)でも三宅島に行くことができるようです。






イルカの住む島

 三宅島には、イルカウォッチングをお世話してくれるところがたくさんあります。今回パックツアーで申し込んだ僕たちは、マリンベースさんの船に乗せてもらいました。まわりはみんなイルカウォッチングの初心者ばかりで、僕らも安心して船に乗せてもらいました。

 船は三宅島を出発して、御蔵島を目指します。片道1時間くらいですが、やはり島というだけあって波もあり、かなりの揺れです。船の揺れと緊張とで、たどり着くまでにかなり気分が悪くなってしまいましたが、御蔵島のそばまで着くと、イルカと泳ぎたい一心で、なんとか気をとり直しました。

 イルカと泳ぐ前に、まずは肩ならしです。船から海に飛び込む練習と、イルカウォッチングのひととおりの流れを教えてもらいます。島の周りは、すでに他の船でいっぱいです。そんなにたくさんイルカがいるのかなあって思いましたが、ガイドさんの指差す方に目をやると、確かにイルカがゆったりと泳いでいます。

 ガイドさんは、あせらずに遊んでくれそうなイルカを探しています。イルカも人間と同じで、いつも遊んでくれるとは限りません。それに一頭一頭性格も違うそうです。ガイドさんが笑顔で合図を送ってくれました。いよいよイルカと泳げるのです。いやがおうにも緊張は高まります。





水中にこだまする声

 海に飛び込み、まわりを見渡しました。何も見えないけれど、ピーピーという音が周りにこだましています。きっとこれがイルカの鳴き声だと思い、イルカを探しました。水の中では音のする方向をつかむのがなかなか難しいのです。
ハンドウイルカ
 船の上からガイドさんがイルカのいる方向を教えてくれます。その方向へ向かって一生懸命泳ぎました。遠くの方から何かが近づいてきます。ハンドウイルカです!それも1頭だけではなく、何頭もの群れがどんどん近づいてきます。まったく逃げる様子もなく、僕の目の前を次々に通り過ぎていきました。

 まず驚いたことは、水中で見るイルカは想像していたよりも、ずっと大きいということです。目の前で見るイルカの迫力に驚かされました。そしてこちらが必死になって泳いでも、まったく追いつけないくらい早いです。つまり、僕らがイルカにくっついて泳ぐなんて事は不可能で、イルカの方が僕らに興味を持ってくれない限り、いっしょに泳ぐことはできないとわかりました。

 そこで作戦を立てました。イルカたちが少しでもこちらに興味を持ってくれるように、水面にぷかぷか浮いているだけじゃなく、下に潜って回転したりして、イルカたちを誘ってみようと思いました。しかし、潜ることに慣れていない僕は、まったく息が続かず、すぐに浮上してしまうので、イルカもなかなか近づいてきてくれません。僕のイライラはつのるばかりです。





夢のようなひととき

 何回か船から飛び込んだ後、「もうこれで最後ですよ」とガイドさんから指示がありました。僕は持っていたカメラを手放し、最後のイルカに賭けることにしました。泳ぎながら写真を撮影するのは、かなり難しいです。写真のことは忘れて、思いっきりイルカと泳いでみようと思いました。

 最後のイルカウォッチングは岸のすぐそばでした。泡がたち、まわりが良く見渡せません。すると突然、目の前にイルカが現れました。イルカは通りすぎていったかと思うと、向きを変えてこっちへ戻ってきてくれます。やった!心の中で叫びました。イルカは行ったり来たりしながら、何度も僕の周りをまわってくれます。

 手を伸ばせば、触れることができるところにイルカがいます。僕は内側をまわり、イルカは外側をゆっくりとまわっています。まるで夢のようなひとときでした。気がつけば他にも何頭かイルカがいました。底から勢いよく浮上してきたイルカは、僕の目の前で、豪快な空中ジャンプを見せてくれました。イルカたちは、ひととおり僕たちと遊んだ後、また泳ぎだしました。ほんの数分の出来事だったと思うのですが、とても長かったような気がします。

 船に上がると、みんなの顔から自然と笑顔がこぼれていました。イルカと泳ぐということは言葉にできないくらいの喜びがあります。最後にこんな素敵な体験ができて、僕たちは大満足でした。





いつか再び

 船上から周りを見渡すと、目の前は御蔵島です。砂浜などはなく、まわり中ずっと断崖絶壁に囲まれています。良く見ると崖から白い滝が流れ落ちています。御蔵島は水の多い島なのです。この御蔵島のまわりでイルカたちは子育てをし、年中暮らしています。

 船は三宅島に帰る前に、またイルカを探してくれました。今度は、船上からのウォッチングです。遠くで飛び跳ねるイルカ、のんびりと泳いでいるイルカ、同じイルカでもいろんなイルカがいることに気づきます。気がつくと、船の軸先にイルカが近づいてきます。走り出す船の先端で、イルカもどんどんスピードを上げます。

 船から下を見ると、イルカが仰向けになったり、こちらを見たりしながら、ものすごいスピードで泳いでいます。船は、さらにスピードを上げます。そしてついに、ついて来れなくなったイルカたちは去って行きました。いつまでもイルカを見ていたかったのですが、そうとばかりは言っていられません。また、このイルカたちに会いに来ようという思いを胸に、イルカたちに別れを告げました。


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