有名な那智の大滝があるところです。熊野灘の黒潮にのってクジラたちが回遊してきます。近くの太地町では、昔から捕鯨が盛んで、今も突きんぼ漁の船がクジラを追いかける様子を目にすることができます。
会えるクジラ | マッコウクジラ・コビレゴンドウ ハナゴンドウ・ハンドウイルカ・シワハイルカなど |
会える時期 | 5〜6月(マッコウクジラ) 5〜9月(小型クジラ・イルカ) |
[マッコウクジラに逢える!] [カツオのトローリング体験] [マッコウ発見!] |
[巨大な丸太] [マッコウの群れに囲まれる!] [マッコウに衝突か!?] |
小笠原で初めてクジラに逢って、すっかりその魅力に取り付かれてしまった僕は、他の場所でもクジラに逢えないものだろうかと、いろいろ調べてみました。そしたら、意外にも近くの和歌山県で逢えるというじゃありませんか!しかもシーズンは5〜6月で、ちょうど小笠原帰りの僕にはぴったりです。
もうこれは行くしかないということで、早速ホエールウォッチングをお世話してくれる南紀マリンレジャーサービスさんに予約しました。和歌山で逢えるクジラは、マッコウクジラ。遥か3000メートルの深海まで潜って、巨大なイカと格闘するという伝説のクジラです。前からぜひ逢ってみたかったクジラです。
今回は、当時の同僚である堀先生を誘って、二人で行ってきました。船の出港が朝の6時だというので、夜中にひたすら車を走らせ、ねむたい目をこすりながらの乗船となりました。しかし、憧れのマッコウクジラに逢えると思えば、眠気なんかどこかへ吹っ飛んでいきます。
いよいよ船の出港です。ここでは、ホエールウォッチングを年中やっているわけではなく、普段は漁師をやっている方たちが、この時期だけホエールウォッチングに連れていってくれるのです。ですので船は漁船で、魚釣りの道具もたくさん積んであります。
クジラ発見までの時間は、船尾から仕掛けを流し、この時期に獲れるカツオやシイラのトローリングを楽しむことができます。魚がいるところには、海鳥がたくさん群れているので、そこへ向かって船を走らせます。
仕掛けを眺めていると、突然糸がピンと張りました。よく見ると青い物体がきらきらと輝いて見えます。船長さんに教わりながら、少しずつ糸を手繰り寄せると、大きなカツオが上がってきました。ほんとにきれいで、青く光り輝いています。自分の力で釣ったわけではなかったのですが、とても嬉しかったです。
今度はいよいよクジラを探す番です。深海まで潜るマッコウクジラは、一度潜水してしまうと、なかなか上がってきません。長いときでは、1時間以上、潜ったままのときもあるようです。このクジラを探すのは、並大抵のことじゃありません。
しかし運がいいことに、この時期の海にはカツオ漁の船などが、たくさん出ているので、クジラ発見の情報があれば、すぐにウォッチング船に届けられるようになっています。この日もあっという間に無線が飛び込んできました。マッコウがいっぱいおるぞー、無線から聞こえる声が興奮しているのがわかります。こちらにもその興奮が、ガンガン伝わってきます。
船は、情報のあった場所に針路をとり、全速力で動き出しました。深い海に潜るマッコウクジラは、陸のそばに出ることはまずありません。黒潮の流れるマッコウポイントまで、全速力でも船で1時間くらいかかってしまいます。みんなは、その間ずっと、どきどきしながら、まだ逃げないでいてくれるようにと祈るのでした。
船が急にスピードを落としました。船長さんが、前を見てください!と叫んでいます。みんな慌てて船首に集まり、指差す方を眺めると・・・。いました、確かにマッコウクジラです!斜めに上がるブローと、ごつごつした背中が見えます。小笠原で見たザトウクジラと違って、同じ場所からほとんど動かず、じーっと漂っているだけのように見えます。まるで、丸太んぼみたいだなあって思いました。
次にクジラは船の存在に気づいたのか、こっちへ向かってきます。大きな頭を持ち上げて、こちらを探っているようです。マッコウクジラは、頭からカチカチというクリック音を出して、相手を調べる能力があります。きっとこのときも僕らの乗っている船にクリック音をぶつけていたのでしょう。
マッコウクジラのクリック音は、相手を調べるだけじゃなくて、時には相手をしびれさせるくらい強く発することもできるそうです。それで、巨大なイカをしびれさせて捕まえるという説もあります。未だ誰も見たことがないので、ほんとに謎が多いクジラですが、それがまた神秘的でいいですね。
ふと気がつくと、他にもマッコウクジラがいます。知らないうちに、浮上していたのです。いつのまにか船の周りは、マッコウクジラでいっぱいになっていました。全部で10頭くらい、いたようです。巨大なクジラに囲まれるのは、すごい体験です。周り中クジラだらけで、みんな大喜びでした。
マッコウクジラは、群れで集団生活をします。いろんな種類の群れがあって、雌のクジラ数頭とその子供たちによって構成される「繁殖育児群」と呼ばれる群れや、若い雄だけの比較的小さな群れもあります。成熟した雄は群れを作らず、世界中をひとりで回遊するということです。僕らが出会った群れはどの群れだったのでしょうか?
クジラは相変わらず、ぼーっとしたままで、船が近づいても気づいてないようでした。深海まで潜った後なので、疲れきって頭が働いてないのかもしれません。ただ、ひたすら呼吸(ブロー)を繰り返してました。クジラが4頭くらい並んで呼吸している姿は、かなりの迫力です。
船が近づいても、クジラはまったく気づかないので、ぶつかりそうになってしまいました。あわやというところで、気づいたクジラが身をひるがえしたので、なんとか接触は避けられましたが、緊張してどきどきしちゃいました。もう目の前にクジラがいるのです。僕のそばにいた女の子は、その瞬間クジラに手を伸ばして、触ったと言っていました。すごい度胸です。
クジラたちが、急にあわただしくなったかと思うと、次々に尾を高々と持ち上げ、潜っていきます。これからまた、深海での長い闘いが始まるのです。マッコウクジラの大きな尾びれが上がるたびに、みんなの中から、歓声とため息がもれていきます。とても美しい光景でした。
その後、マッコウクジラに別れを告げて、帰路につきました。帰る途中、ハナゴンドウの群れにも出会いました。小さな身体で垂直飛びを何回も披露してくれました。ほんとにジャンプが好きなイルカです。船が、港のそばに来た頃、太地のほうから船が何艘も出て行くのを見ました。
船長さんによると、さっき見たハナゴンドウを銛でつく、突きんぼ漁の船ということでした。マッコウクジラなどの大型鯨類の捕鯨は禁止されていますが、小型のイルカなどは、今でもこうやって捕まえられてるんだなあって事をはじめて知りました。
港についたら、最初に釣り上げたカツオやシイラを、その場で刺身にして出してくれました。おまけに魚のだしで作った味噌汁まであります。疲れた身体には、ほんとにありがたいです。みんなで美味しくいただきました。
このときの体験は、いつまでも忘れることができません。今でもしっかりと、あのときの光景が心に残っています。また、あのときのような出逢いを夢見て、今年もマッコウクジラに逢いに行くのです。
南紀マリンレジャーサービス | |
住所 | 和歌山県那智勝浦町宇久井285-2 |
TEL | 0735-54-0725 |
出港時間 | 午前 6時〜11時 (7月からは7時出港になります。) 午後 12時〜 5時 (7月〜9月の平日は午前中の1便のみ になります。土日は午後も運行します。) |
料金 | 大人 6500円 小学生 5000円 |